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かねてから「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」 (Toyo Ito Museum of Architecture=TIMA)が完成した暁には、 瀬戸内海の島々に完成したベネッセ関係の建築やアート・プロジェクトも、 一挙に見学しようと目論んでいた。 日頃貧乏暇なしの生活を余儀なくされている僕にとって、 そのような好機はGW連休の「ロンドン建築探検ツアー」以後で、 梅雨入り前しかないと踏んでいた。 やっとやりくりがついた6月2日の早朝、松山へとぶっ飛んだ。 最初のターゲットは「TIMA」だ。 松山から車で約1時間半、大三島の人里離れた海沿い。 美観と静寂と鶯の鳴き声だけが支配する別天地。 「TIMA」の手前に、山本英明氏設計の 「ところミュージアム大三島」があったが、これがナカナカいい。 海に向かって段状に下降する斜面建築で、 オープンなつくりが静穏な周囲の美景を取り込み、 来館者に寡黙を強いる素晴らしさ!ここのテラスからの景色は秀逸! 「ところミュージアム大三島」のテラスから左側にちょっと顔を出した「TIMA」 「ところミュージアム」の正面入口(左) 美術館はワイドなヴィスタが楽しめるテラスへと開放されている〈右) 伊東さんの「TIMA」は、自邸の「シルバーハット」を 再生(移築ではない)したものと、 新にデザインした「スティールハット」から成っている。 前者は風が通り過ぎていく空間の居心地よさが格別。 後者の幾何学的でアンソロポモルフィック(擬人化的)な形態で 海を見下ろす様は、濃い黒褐色のカラーと相まって不敵な佇まい。 僕は完璧に魅了された。 オスロ市のコンペで用いた多面体をヒントにしたようだが、 分節性の少ない曖昧でシーケンシャルな空間を続けて来た伊東さんは、 なだらかな自然に対峙するクリアカットで強いフォルムを提示した。 じゃあ自然と対立して馴染まない建築?と思うのは早計で、 これが周囲の景観にピタリとハマって文句を言わせない!流石です! 山を背景に擬人化されたような風情で立つ頭部のある多面体(左) エントランス側から見ると頭部は見えない(右) 1階レベルの内部。左の階段を下ると頭部のある棟の吹抜け空間(左) 風が通り過ぎていく開放的なシルバーハット(右) さて丹下健三氏の故郷であるここ今治には、 伊東さんの弟子で当地出身の若手建築家、 白川在氏の話題作があると聞いて寄ってみた。 それは四国八十八箇所霊場第57番札所の名刹、 栄福寺の寺務所であった。 「栄福寺演仏堂」は1階が寺務所、2階3階が庫裏と、 住職の公私にわたる生活を包含した難しい建築。 規則的に並んでいる窓は大小あり、非常に複雑な様相。 壁厚が最大70cmもある壁に穿たれた開口部は、 コルビュジエの「ロンシャンの教会」の有名な銃眼窓を彷彿とさせる。 だが外に向かって単純に先細りしたカラフルな「ロンシャン」のそれとは違って、 壁厚部分を上下左右へと斜めに穿ってより複雑だ。 このジオメトリックな処理は、各々の窓に与えられた役目を発揮させるために、 白川さんが太陽の運行や日照を計算して考案した高度に機能的なデザイン。 視線、眺望、自然光の導入などを巧みにクリアした佳品だ。 土佐しっくいを使用した外壁はローカルな景観にナイス・フィット!(左) 開口部の壁厚部分のデザインやガラスの位置も多種多様(右) 種々の開口部形態が集合する光溢れるコーナー部の輝き(左) 庫裏3階の窓。地上からの視線をカットし遠景だけを取り込む巧みな窓デザイン(右) 「ロンシャンの教会」内部は暗いが銃眼窓から豊かな色彩光が流入する 翌日は高松から直島へ。 船が直島に近づくと、安藤(忠雄)さんの「地中美術館」と 「ベネッセハウス」の双方を、ワンショットで撮れる海域があるのを、 以前来たことがあるので知悉しており、必撮のショットをトライした。 到着した宮浦港には妹島和世さん設計の海の駅「なおしま」がある。 これが彼女らしく繊細で華奢なつくり。 屋根は限りなく薄く、柱は限りなく細く、 台風でも来れば吹っ飛びそうなつくり。 むしろだからこそ、風の抵抗が少なくて強いのだろう、 などと考えながら、朝食抜きのお昼をビールとお蕎麦で腹ごしらえ。 埠頭には草間彌生の「かぼちゃ」があって大人気だった。 正面左に「地中美術館」、右手に「ベネッセハウス」を捉えた必撮ショット(左) 草間さんのかぼちゃから、“手も足も出している”人はだれですか?(右) 低くスリムなプロポーションの海の駅「なおしま」(左) 簡潔・明快・繊細・希薄(右) ベネッセのシャトル・バスで最初は「地中美術館」へ。 かつて安藤さんからオープニングに招待された時は、 自由に内部撮影はできたが今はご法度。 内部は地中のイメージを維持するために暗く、 またかなりのラビリンスで初めての人は迷う。 僕は今回も迷ってしまった! ここには安藤さんのアート作品とも思える スロープ回廊の壁面に切り開かれた水平的な亀裂がある。 周知のようにここのアーティストは世界的な豪華キャストだ。 鑑賞疲れで海側のカフェ・テラスへ。 生ビールで元気をつけて、さらに「地中美術館」から 5分ほどのところにある「リー・ウーファン美術館」へ。 海に面した谷間に、安藤流の長い寡黙な壁面を 3重に連立させたファサードは、サイレントな迫力がある。 その前面のアクセス広場のランドスケープ・デザインも、 リーの彫刻作品を配して息を呑むような美しさ。 この作品は僕も初見だったが参った! 建築はローケーションがいいと、さらなる魅力を発揮する! 「地中美術館」のシンプルなゲート(左) 「地中美術館」の海側の外観(右) 整然とした「リー・ウーファン美術館」前のアクセス広場(左) 3枚の壁が連立するエントランスへのアクセス(右) 夕刻前、安藤作品の3つ目「ベネッセハウス」へ。 ここは美術館ホテルだから、夜でも美術鑑賞ができる利点がある。 展示作品は巨匠のものばかり。 僕の好きなブルース・ナウマンをはじめ、大竹伸朗、 川俣正、ジョナサン・ブロフスキー、杉本博司、 安田侃、ヤニス・クネリス、リチャード・ロング等々。 再び鑑賞疲れでカフェへ。 大槌島(左端)の夕景を見ながら生ビールで元気付け! その後は新しい宿泊施設があるビーチのほうへ歩く。 安藤さんの木造ホテルである「パーク棟」は、 客室にユニークなアイディアがあった。 洗面器が浴室内になく、アイランド型でエントランスの横にあったり、 テラスに出るドアにはカーテンがなく木製ガラリ引戸。 ガラリが上下に動いて開閉する優れもの。 テラスも気持ちがいいのでついミニ・バーのビールに手を出してしまった! レストラン棟まで複雑な動線。 だが内部は高い天井と眼前に広がる松林越しの海。 その向こうに、やがてかすかに輝いてきた高松の街。 素晴らしい脇役を従えた安藤空間でのフレンチは、 日本料理好きの僕をも黙らせるうまさだった! 「地中美術館」から見た素晴らしいロケーションにある「ベネッセハウス」(左) ビールが飲みたくなる「ベネッセハウス」2階テラスからの夕景。杉本博司の外部展示が下に見える(右) 長く延びた切妻屋根が木造のホテル「パーク棟」(左) レストランの大きな開口部からは松林越しに海、そして高松の街が夜輝きだす(右) 豊島(てしま)は直島ほど開けていない島だ。 ここでのターゲットは西沢立衛氏の「豊島ミュージアム」。 建物は棚田の最下部あたりで、 森を背景にしてうずくまる白い穴のあいたUFOのごとき様相。 周囲の緑と白い外観がナイス・マッチングだが、 内部はさらに神秘的な美質が加わって、えもいわれぬ静謐感! 内藤礼の水のアートも不思議で神秘的! 「豊島ミュージアム」の見学は、近年稀に見る魅力的な建築体験であった。 犬島は豊島よりさらに開けていない島だった。 三分一博志氏の改修作品「精錬所」は、 アーティスト柳幸典氏との協働作品。 旧三島由紀夫邸の建築的断片を使用したアートは面白かったし、 暗い廃墟の中を徘徊する体験は、 忘れていた遠い少年時代の洞窟探検を思い出させてくれた。 だが残念だったのは、三分一さんがデザインした 新しい建築部分の空間体験は、一切できないことだ。 森を背景に白亜の美術館は美しく横臥する(左) 棚田越しの全景。左はカフェなどがある付属棟(右) 犬島の「精錬所」の廃虚(左) 三分一さんのガラス張りの新デザイン部分は体験できない(右) 今回の瀬戸内海の島々における美術館巡りは、 建築と展示内容が非常に魅力的だった。 今後できれば見学したい人のために、 建築・美術ツアーを組みたいと思っている。 建築・美術・風景・ビールと、四拍子そろったのが、今回の旅の醍醐味であった! 満月の夜、直島から望見するかすかに輝く高松の街 写真をクリックすると大きくなります。 Photos&text : Masayuki Fuchigami / Synectics inc.
by archieditor
| 2012-06-18 07:31
| Architecture
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