091221 小嶋一浩＋赤松佳珠子の超最小限スペース

「12のスゥトゥッディオーロ」
設計：CAt（小嶋一浩＋赤松佳珠子）

12月16日の午後、小嶋一浩＋赤松佳珠子（CAt）設計の
「12のスゥトゥッディオーロ」を見学させてもらった。
南麻布の懐深く、閑静な街並の角に立つ建物は、
地下1階地上4階建ての2棟にそれぞれ6戸を擁する集合住宅。
と、ここまでは何の変哲もない建物だが、各棟の敷地が28.2㎡と32.8㎡と極小だ。
さらにそれぞれの延床面積が73.5㎡と77.9㎡。
ということは普通の小さな住宅の広さに、6戸も詰め込むのだから大変だ。
しかも5階建てに6戸はややこしい。入り込んだ複雑なメゾネット・タイプが多い。

角から見た全景。ランダム風に穿たれた窓が住戸配置の難しさを物語っている（左）
トイレとバスが下階にあるメゾネット（右）


小嶋さんの案内で全戸を渉猟！ビックリすることだらけで、
人間やればこれほどできるんだ！というのが実感だった。
1室わずか13㎡ほどの“書斎”の提案だが、その超最小限住戸は
建築家が知恵を絞った数々のアイディアで狭さを克服していた。

この住戸は都内に隠れ家的な書斎をもち、本に囲まれた静かな環境で
執筆や読書、あるいは自分の自由な時間をもちたい人のためのもの。
だから小嶋さんはまずRCの壁面にダボレールを無数に取り付け、
本棚、机、飾り棚、ゴルフ･クラブ掛けなど、住人が自在にレイアウトするようにした。
このダボレールは開口の上に出てくる徹底ぶり。

壁に埋め込まれたダボレールでデスクや棚が自在に作れる機能性がある（左）
狭いがひとり静かに執筆・読書・瞑想・妄想に浸れる空間（右）


入口脇のスイッチ、インターホン、照明などもカバーで隠して視覚的な広さを獲得。
各戸には便器、洗面台、洗濯機、シャワーもしくはバスが既設。
ただし便器が丸見えなので、メゾネット・タイプでないと人は呼べない。

メゾネット･タイプでひとつ驚いたのは、急勾配で狭い階段を上がると、
いきなり小さなバスタブがある浴室。
横に大きな開口部があって南麻布界隈のルーフスケープが見える。
足をちじこませて風呂に入っても快適な気がしてきた。

ドア脇の室内灯にカバーを付けてエレガントな演出（左）
カバーはインターフォンやスイッチ類も隠している（右）

トイレ、シャワー、洗濯機、洗面台がまとまっているワンフロア・タイプ（左）
小さなバスタブが付いているタイプ（右）


外観はコーナーに立つ白い建物を中央で分断して2棟に。
足元には水道のメータが並んでいる。
建物背後は「ポンピドー・センター」のごときダクトの森。
開口を避けたパイプ配置もデザインだ。
最後に小嶋さん、
「乾（久美子）さんの『アパートメントI 』より、こっちのほうが小さいです」。
大変な手間ひまをかけた“珠玉の小品”は、すでに最上階から入居者が決まりだした。

建物葉以後のダクトの森。開口部を避けての巧みな配管もデザインだ（左）
すべて間取りが違う全12戸を案内・解説してくれた小嶋さん、お疲れ様（右）



photos & text : Masayuki Fuchigami / Synectics inc.