100424 長田直之のオープンハウス「KOK CONTE」を見る

「KOK CONTE」
設計：ICU architects office（長田直之）

このところ多忙でブログすべき事柄が溜まってきてしまった。

4月11日（土）のポカポカ陽気。
長田さんの「KOK CONTE〈国領町集合住宅〉」は、
京王線国領駅から徒歩6分ほどの、
甲州街道からちょっと入った閑静なところにある。
道路の向かいに小公園があり、小桜がチラホラ散っていた。

桜が散る小公園から「KOK CONTE」を見る


建物は一見して大きな開口部が特徴であるのは直ぐ分かる。
しかしよく見ると、フラットになりがちな道路沿いのファサードが大きく切り取られている。
水平方向と垂直方向に凹んだファサード部分はヴォイド空間となり、
都市が入り込んでくる。これは平面上では内部空間の面積は減少するが、
立面形では壁の面積が増えることになる。
外壁は打放しではない。
外断熱をしており、コントラストを考えてモルタルの上に
弾性リシン吹付けでガサついた感じにしている。

小公園の前から見る。玄関ポーチ部分が大きくえぐられている（左）
正面側からの全景。2階は水平方向に、左側は垂直的にカットされている（右）


さあ内部に入ってみよう。１戸あたり2室からなるこのマンションでは、
入った部屋がLDKで、もうひとつが寝室という感じだ。
この両方を隔てているのが壁ではなく、
先ほどの垂直に侵入したヴォイド空間なのだ。
ガラス張りとなったヴォイドを囲む透明な壁面からは、
自然光や都市景観がふんだんに入ってくる。
しかも開口部はフルハイト〈床から天井まで〉の大きさだから、
明るいことこの上ない。縦型ブラインドで如何様にも調節可能だ。

外部のヴォイド・スペースをガラス開口部が取り囲んでいる（左）
ふたつの部屋がヴォイド越しに向き合う感じで非常に開放的（右）

キッチン・エリアもフルハイトの開口部で明るすぎるくらい


パブリックな部分も広いのがこのマンションの特徴だ。
2階にある水平的なヴォイド・スペース〈テラス〉は、
マンションにとっては贅沢なくらいだ。
ここではパーティなどいろいろなイベントができるし、
14戸に住む人たちが一堂に集えるスペースだ。
廊下なども普通のマンションよりかなり広く、余裕が感じられる造りだ。

長田さんは安藤忠雄建築研究所のOB。
それで安藤さんに似て、直線的なジオメトリーですっきりした空間構成だ。
僕が最近見る若手建築家の作品は、個性派が多かった。
前回の平田晃久さんもオーガニックな構成で魅力だったが、
長田さんのはとにかく部屋が広い、明るいとノーマルな点で魅力的だ。
40㎡くらいで9～12万円だという。
久し振りに見た本格的なマンションは、じきにいっぱいになりそうだ。

トップライトで明るい階段室を2階テラスへ（左）
テラスは開放的なマルチパーパス・スペースだ（中）
3階の廊下も広いし開放的だ（右）



photos & text : Masayuki Fuchigami / Synectics inc.