120907 潤いに満ちた「アシナガハウス」探訪

「アシナガハウス」
設計：M.A.D＋SML （M.A.D基真由美＋SML西牟田奈々）

まだ残暑が厳しい8月22日の朝、僕は日本橋へと急いだ。
基真由美さんという建築家の方から
「アシナガハウス」のオープンハウスの案内をいただき、
そのお知らせメールでちょっと面白そうな住宅だなと思ったからだ。
日本橋は都心とはいえ、未だにそこかしこにビルの谷間的な空間があり、
そこで暮らす人がいるのだ。

日本橋のビルの谷間でも太陽は入る


「アシナガハウス」も典型的な”ビルの谷間住宅”だ。
3方をビルに囲まれ、長辺方向のファサードが接道に面している。
RCフレームの中に黒色のサイディングを納めたメリハリのある表情。
おっ、結構写真になるなと思いつつ外観をパチリとやっていると、
「淵上さんですか」と後ろから声がかかった。
振り向くと知らない人（失礼！）。
基（もとい）さんは昨年僕が東京都市大学の学園祭で講演をした時に、
名刺を交換したようだ。
道路側正面は左手に車2台分の車庫。右手半分が玄関だ。

かなり存在感のある外観（左）
いいルックスをしている道路側立面（右）


玄関は図面では”遊ぶところ”などと、女性っぽく可愛いネーミングを付けている。
子供の遊び場を兼ねているので広い。
入った右手の壁面がベージュに彩色されてソフトな印象だ。
制約の多いビルの谷間住宅に、潤いを心掛けたひとつの試みと見た。
正面の階段で2階へ行こうとすると、見上げた階段の先に真っ赤な壁が！
おっ、やるな！ますます女性的だなと思いつつ登って行くと、
LDKのメイン空間。居間のコーナー部に、
やっと光が入るくらいのか細い日照が届いていた。
だから居間の接道側は、向かいはマンションで正対するが、
全面開口部としてカーテンで調節する。
居間には色彩がないなと思っていると、基さんがトイレのドアを開けた。
中は先ほどと同じ赤色だ。

玄関ホール兼遊ぶところ。右手がベージュの壁（左）　　2階への階段見上げ（右）

居間からDKを見る（左）　　居間の道路側開口部（右）

トイレのドアを開けると真っ赤な色。右手がDK



3階は主寝室と子供部屋が対峙している。
全フロアをワンルームとして、子供部屋の二つの家具で仕切っている。
子供部屋の北東側壁面は、素晴らしい色彩が使用されて和める。
基真由美（M.A.D）＋西牟田奈々（SML）のデザインは、
一見ピエト・モンドリアンやヘリット・リートフェルトらのデ・スティル風の色使いを想起させるが、
彼らの原色とは違って、ソフトなハーフトーンは心安らぐ優しさを持っている。

3階主寝室から子供部屋方向を見る。マリンブルー（？）のきれいな壁（左）
子供部屋から主寝室方向を見る（右）


最後は屋上だ。3階上部の低いロフトからハッチを開けて屋上に出ると、
周囲は高い建物に囲まれているのがよく分かる。
日本橋のビルの谷間という厳しい環境に、
潤いに満ちた住環境の創出を試みた彼女らの意気込みや良し！

この環境では屋上は使えそうにない（左）
玄関で施工会社の人と話す基さん（左）と西牟田さん（右）　（右）



写真をクリックすると大きくなります。
Photos＆text : Masayuki Fuchigami / Synectics inc.