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5月連休の「アメリカ4大住宅建築探検ツアー」から戻った週末、
即浜松と静岡の建築探訪に出掛けた。 浜松は鰻で有名だけでなく、建築でも有名作品があるのだ。 周知のように浜松駅前には、「アクトシティ浜松」 (設計:日本設計+三菱地所設計)という超高層が立ち上がっている。 いつも新幹線から見上げて20年間、一度も降りて見たこともなかった。 文字通り浜松一の高さを誇るランドマークだ。 途中から細くなる「アクトシティ浜松」のシャフト部分にはホテルオークラがある ホテルから夕映えの赤石山脈方向を遠望する 浜松駅から真北に延びる遠州鉄道線の西鹿島駅。 駅から車でちょっと行くと藤森照信設計の「秋野不矩美術館」がある。 藤森流のローテクなデザイン作法を十分生かしたつくりが、温もりを与えてくれる。 一見すると傾斜屋根はシングル葺きに見えたが、近づくと石葺きだった。 諏訪地方産の鉄平石。 杉板の外壁とマッチして、和風の風味がじわっと伝わってくる。 メイン構造はRCだがその上に泥を塗ったような外壁の仕上げもいい。 エントランス部分は木造で、ロビー空間は黒塗りの大黒柱や梁が飛んで、 吹抜けの大空間にアクセントを付けて素晴らしい! 床や壁は藁入りの漆喰仕上げで、農家にでも入ったような錯覚にとらわれる。 秋野不矩氏の絵画はインドのものが多く、 僕は水牛が川を泳いでいる絵が気に入った。 古色蒼然たる佇まいの「秋野不矩美術館」は、 失われゆく和風建築のテイストを心の隅に残してくれた。 アプローチが側からの全景 木造の玄関棟を見る。どろんこを塗ったような外壁から木造の樋が出ている ロビー空間に枝を延ばしたような黒塗りの柱や梁 2階の階段室。正面の開口部はロビーの吹抜け この後今度は打って変わって現代的な建築を見学した。 やはり鹿島駅近くにある「ロキ・グローバル・イノヴェイション・センター」だ。 建物は若手建築家の小堀哲夫氏が設計した先端的オフィス空間。 入口側は平屋で低いファサードだが、 内部のメイン・スペースは4層吹抜けの無柱大空間。 前方に向けて湾曲しながら下降する光天井は、 木造格子とスティール格子のハイブリッド・トラス。 だが見えるのは木造格子だけで、和風っぽいソフトな雰囲気の広がりが素晴らしい。 天井の膜材は、クライアントの製品である自動車用のロキ・フィルター。 自然光の移ろいによる光色・明暗の変化を投影し、 直射光の強度を和らげる優れもの。 随所にグリーンを植込み余裕の広さをもつオフィス環境はスタッフに大人気。 1階に下ると、目の前の池から爽やかな風がオフィスを抜けて行く。 その清涼感は周囲の緑とあいまって圧巻! 池越しに見ると、ロウ・アイアン・ガラスの大屋根にプロテクトされた曲面の建物は、 緑の森に身を沈めた高度に技術集約的な宇宙船のように見えてきた。 池越しの「ロキ」は緑に埋もれる宇宙船だ 緑と水のランドスケープに開かれたオフィスは森の中で執務をしている感じ ハイブリッド・トラスに支持された無柱大空間は無類の開放性 案内してくれた小堀さんと明るく開放的な空間でツーショット 翌日は朝一掛川駅へ行き、タクシーを飛ばして 谷口吉生設計の「資生堂アートハウス」へ。 新幹線で何十回となく数秒の外観見学だけに甘んじてきた己の怠惰を自戒し、 開館時間10時に合わせて到着。なんと入場無料。 受付で建築を見に来たというと、図面をくれる。 それで分かったのだが、平面形は正方形と円形の空間に分かれ、 前者には円形の、後者には正方形の小さな中庭を取り込んでいる。 正方形の展示室には開口部がなく暗い空間で 「人間国宝による竹工芸と金工」展が開催されていた。 円形の展示室は新幹線から見える憧れの空間であった。 数を控えた作品群が広い湾曲空間にスペースを取って配された空間は、 余裕の展示方式を見せて素晴らしかった。 しーんとした静謐空間での美術鑑賞で、命が洗われる思いであった。 帰途は徒歩に挑戦したら、掛川駅まで20分であった。 アクセス側からから見た「資生堂アートハウス」 静謐感に満ちた静まり返った展示室 この後東海道線で東静岡駅まで北上。 駅前にある磯崎新設計の「静岡県コンベンション・アーツセンター”グランシップ”」を見学。 余りの巨大さにビックリ。 日曜日でイベントをやっていたので、中に入って一巡りしてきた。 静岡駅に戻って西沢大良設計の「駿府教会」へ行く。 線路際にある建物は、踏切に面したコーナー部がメインの入口だが閉まっていた。 横に回ると丁度お婆さんが鍵を閉めて出て行くところだった! おっとちょっと待ってください!近づいてわけを話すとオーケーとなって中へ。 誰もいない木造格子の内部空間は、高い天井で温もりがある。 写真を撮っていると、ふと気が付いた。 祭壇後部の壁面上部に自然光による十字架が影を落としていた! お婆さん曰く「これ偶然なんですよ!」 竪羽目板張りの外壁は、竣工当時の爽やかな木質の色から、 経年変化によりグレー調に落ち着いてきた。 磯崎新設計の巨大な「グランシップ」 踏切越しに見た「駿府教会」。正面コーナー部の鉄格子が入口 祭壇背後の高い木造格子の壁面に昼光による十字架が影を落とした 踏切方向を見た外観。立っているのが親切なお婆さん この後長谷川逸子設計の「静岡大成中学・高等学校」へ行く。 グラウンド側の外壁には彼女がお気に入りのパンチング・メタルを多用し、 スクエアなマッスをキャンティレバーで突出させ、アクセントを付けている。 中・高等学校ではセンスがいいという印象。 それもそのはず、彼女はここの卒業生。 ここの同窓会館として設計した有名は「眉山ホール」で、 1986年に建築学会賞を受賞したが、建物はすでに現存してない。 校庭側から見たパンチング・メタルを多用した外観 キャンティレバーで突出したマッスが外観にアクセントをつけている さてそろそろお腹が空いてきたなと駅の方へ歩き始める。 鷹匠という粋な名前の地区に来ると、 和風の素敵なアプローチがある蕎麦屋「つむらや」に出っくわした。 中は混んでいたがひとりなのですぐ席が取れた。 ビールと板わさでスタートしたが、板わさの切身が厚く量が多いので、 つい地酒も頼んで独酌の昼酒となってしまった! 僕はこの店の箸が気に入って、店員さんに聞いてみた。 静岡駅近くの桜屋で売っているという。 黒くて細長く、しならない強靭さが気に入って2膳買って帰京した。 今毎日使っている素晴らしいお土産だった。 昼下がりの暑さを凌ぐ食事どころには最高の場所だった 蕎麦のざるは中央が盛り上がっているつくり。手前の箸が気に入ってしまった Photos&text : Masayuki Fuchigami / Synectics inc.
by archieditor
| 2014-06-12 06:08
| Architecture
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